ヘブライの館2|総合案内所|休憩室 |
No.b1fha750
作成 2003.4
第1章 |
「超特急列車計画」 |
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第2章 |
戦後36年を経て明らかにされた
「スーパートレイン」の全貌 |
第3章 |
超豪華な2階建て
「スーパートレイン」の客車 |
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■■第1章:ヒトラーが密かに進めていた「超特急列車計画」
●1941年6月22日、ヒトラー率いるドイツ軍は「独ソ不可侵条約」を破って、突如「バルバロッサ作戦」と呼ばれるソ連侵攻作戦を開始した。
ヒトラーの目的はスラブ民族の奴隷化であり、またヨーロッパ東部の広大な地域をドイツ民族の移住地及び資源の供給地として確保することにあった。
(左)1941年6月に始まったヒトラーのソ連侵攻作戦 (右)ナチスが作った反共産主義のポスター
●ヒトラーは支配の効率化と迅速化を図るために、この地域とドイツ本国とを結びつける夢のような「交通網充実計画」を立てていた。
例えば、クリミア・東欧とドイツ本国とを連結する片側11mの車線を有する高速道路(アウトバーン)を建設する予定であった。
↑ナチス・ドイツが占領したソ連内最大の領土(1941~42年)
ヒトラーは、ソ連を占領した暁における「東方ゲルマン帝国」の統治について
きわめて具体的なイメージを持っていた。アウトバーンをウラル山地まで延長し、その
アウトバーンは全て山の尾根に建設して、風が雪を吹きちらす構造にするつもりでいた。
またクリミア半島を、3世紀から4世紀にかけてここに定住していた古代ドイツ民族
ゴート族の名にちなんで「ゴーテンラント」と改称し、“帝国のリビエラ”と
呼ばれるほどのリゾート地をここに建設する計画も立てていた。
●また、ミュンヘンとウクライナを結ぶ3m幅の軌道をもつ鉄道網を整備し、巨大な列車を時速250キロで走らせる計画もあった。
この「スーパートレイン計画」は、最終的にはシベリアの太平洋岸の都市ウラジオストクまで、ほぼ直線コースを突っ走る「欧亜両大陸横断鉄道」になる予定であった。蒸気機関車の全長は70m、客車は2階建てで、内装は豪華をきわめ、計1728人の乗客がドイツ本国からアジアのはずれまでゆったり楽しめるように設計されていた。
※ ヒトラーはこの超高速巨大鉄道網(ブライトシュプールバーン)で、ヨーロッパを支配する構想に駆られていたのである。
1941年にヒトラーが発案した「スーパートレイン計画」の設計図
(左)完成予想図 (右)1940年代当時の普通の特急列車との比較図。
左脇の鉄道職員からも「スーパートレイン」の巨大さが分かる。
この巨大な機関車は計52本の車軸に乗った8両連結で、機関車自身の全長は70mあり、
2万4000馬力を出す化け物マシーンだった。機関車から最後部の展望車まで流線型に成形
され、2階建ての客車(15両連結)も全長50m、全幅6mと当時の客車の2倍の大きさだった。
いうまでもなく、内装も豪華をきわめて「一等車両」には分厚いカーペットを張りめぐらせた応接間、
シャワー付き寝室から成る高級ホテルのスイートなみの設備を備えていた。また、「一等食堂車」は
天井の高さが5mを超え、これまた高級ホテルのダイニングルームを思わせる設計となっていた。
このマンモス級のスーパートレインを時速250キロで走らせるために、鉄道の軌道幅はなんと
3mもあり、ミュンヘンを基点に首都ベルリンを経由して、ウラジオストクまで5日間で走破
する予定であった(その巨大さ豪華さでこれに勝るものは現在でもまだ登場していない)。
(左)ヒトラーが描いた新ミュンヘン駅のラフスケッチ (右)その絵を元にして作られた
新ミュンヘン駅の模型(右端の男はヘルマン・ギースラー博士で中央はヒトラー)
※ 建築家志望だったヒトラーは「新都市計画」に熱意を
注いでいた。ナチスの「新都市計画」は、ヒトラー自身の発案に
より着手され、ヒトラー自身によって推進された一大事業であった。
その両輪となってヒトラーを助けたのがヘルマン・ギースラー博士と
アルベルト・シュペーアである。総統令が出され、ベルリン、
ニュルンベルク、ハンブルク、ミュンヘン、リンツは
「総統都市」として改造が優先された。
■■第2章:戦後36年を経て明らかにされた「スーパートレイン」の全貌
●前章で紹介したように、ヒトラーは自らデザインした「新ミュンヘン駅」を基点にして、時速250キロで走る鉄道を全ヨーロッパに網の目のように巡らすつもりでいたわけだが、この秘密計画は、ドイツの技術者フリッツ・トート将軍(1940年に軍需大臣に就任)の原案からヒントを得たもので、直接このプロジェクトに関係した100人近い高官と技術者以外には全く知らされていなかったのである。
フリッツ・トート将軍(軍需大臣)
優秀な土木技術者だったフリッツ・トート将軍は
「トート機関」(建築や土木の技師団の政府組織)の
生みの親で、V1、V2、V3の基地などの軍事施設や
「アウトバーン」の設計・建設を担当した。1940年に
初代の軍需大臣に任命されたが、1942年2月に
飛行機の墜落事故によって死亡してしまう。
(後任はアルベルト・シュペーア)。
●それが戦後36年を経た1981年に明らかになったのは、偶然のきっかけによるものであった。
お手柄の本人は、ミュンヘン市の鉄道専門家アントン・ヨアヒムスターラーで、たまたま同氏がドイツ鉄道史に関する研究のため取材をしていたことから、ドイツの古文書館で関連資料を発見したのである。
ドイツの鉄道専門家アントン・ヨアヒムスターラーが書いた本
●発掘されたドイツ国鉄の秘密資料によると、対ソ侵攻を達成した段階で、ウクライナの物資を現在のポーランドに輸送する計画が立案された折りに、ヒトラーの「スーパートレイン計画」が浮上したものとされている。
このためヒトラーは、列車に「対空高射機関砲」を中心にした防空能力と、重量のある軍需物資の輸送能力を持たせるよう厳令したことも記録されている。
「対空高射砲銃座」付き貨物・郵便・車両運搬車の側面図
※ 中央に位置する銃座は射角をよくするため屋根に傾斜がつけられている
●また、機関車にはディーゼル、ガスタービン、蒸気機関、電気機関の各案があったことも記されている。
この「超広軌超大型鉄道」で一度に大量の物資(+乗客)を運べるよう、当初は軌道を4.3ないし5.3m幅(!)とし、一車両当たり通常型8車両分の輸送能力が立案されたという。
しかし、様々な検討を重ねた結果、軌道幅は3mに落ち着いたという。
「スーパートレイン」の巨大な車輪
(左)レール断面図 (右)超重量・高速運行に耐える独特の軌道構造
※ レールの土台にあるスプリングがショックを和らげる仕組みになっている
●「スーパートレイン計画」では、1000トン近くの超大型貨物を運搬可能な特殊車両も設計されていた。
その他、乗用車を自走で積み込み可能な密閉型貨車など、様々なタイプの貨物車両が作られる予定だった。
超大型貨物運搬用特殊車両
※ 各8軸を有する4台のボギーは、900トンの貨物を運ぶことが可能。
1943年7月16日ベルリン国鉄中央局案では半完成の1000トン艦を載せている。
(左)1階式密閉型貨車の積み込み方法。乗用車も自走で積み込み可能。
(右)2階式貨車の貨物積み下ろしには2階式の専用プラットホームが計画された。
■■第3章:超豪華な2階建て「スーパートレイン」の客車
●「スーパートレイン計画」は設計段階で敗戦を迎えて挫折の憂き目を見るわけだが、この計画はヨーロッパの支配を夢見たヒトラーが、その野望を象徴するにふさわしいケタ外れの大プロジェクトであった。
アドルフ・ヒトラー
※ ヒトラーはパワフルな乗り物が大好きだった
●第1章で書いた内容とダブるが、2階建てで15両連結される「スーパートレイン」の客車は、全長50m、全幅6mもあった。これは当時の客車の2倍の大きさだった。
客車の内装も豪華をきわめていた。
「一等車両」には分厚いカーペットを張りめぐらせた応接間、シャワー付き寝室から成る高級ホテルのスイートなみの設備を備えていた。また、「一等食堂車」は天井の高さが5mを超え、これまた高級ホテルのダイニングルームを思わせる設計となっていた。
このほかの一般寝台車も紳士用は落ち着いた内容のコンパートメント、淑女用が明るい華やかなインテリアといった凝りようである。
「スーパートレイン」の客車の側面図
※ 「スーパートレイン」の乗客総数は1728人で、
通常の15両連結720人の2.4倍に相当する
(左)客車の内部 (右)昼・夜間兼用車両の一等、二等寝台車に
設けられたホール。左手の扉は理容室でホール自体は待合室。
●寝台車には一人用ベッドを持つ個室の他、バー、読書室、浴室、シャワー室、食堂車、展望車そして理容室などを完備していた。
「スーパートレイン」のバー(奥にカウンターが見える)
●また、気軽に映画を楽しむことのできる「映画館車両」もあった。
「スーパートレイン」の映画館車両の側面図(断面)
2階分を抜いた映画館は196人の観客席を持っていた(映画館をはさむ格好で側に回廊がある)
●ヒトラーの野望を乗せて走る「スーパートレイン」の路線は、ヴォルガ河畔からパリ、ハンブルグからイスタンブールの間の敷設も計画されていた。
また、沿線の駅も荘厳さを強調した大ドイツ帝国の威信を反映する設計で、訪れる旅行者が「その威光に触れて畏敬の念に圧倒される」ものとなるはずであったという……。
「スーパートレイン」の最後尾車両(側面図+1階と2階の上面図)
※ この最後尾車両には食堂と展望室があった
(左)「スーパートレイン」の豪華な食堂 (右)最後尾車両の展望室(完成予想図)
─ 完 ─
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